第9週 BLUE / group_inou2016.9.30
group_inouのライブを初めて観たのは大学生のとき。
IMAIとcpの二人組が生み出すトラックとリリックにどきゅんとハートを射抜かれ、かれこれ10年以上聴き続けています。
福満しげゆきの漫画『僕の小規模な生活』の中で、主人公の男の人が初めてiPodを手に入れ、嬉しそうに音楽を聴いて歩いているのを見て、妻が「音楽聴きながら歩いて、自分が強くなったように思っとると」みたいなことを言うシーンがあります。(うろ覚えなので間違ってたらすみません。博多弁だったかどうかもさだかではないです)
わたしはこれを読みながらgroup_inouを聴いてる自分を思いました。
group_inouの曲を聴きながら、これまでたくさん外を歩きました。今もよく聴きながら歩いています。
わたしにとってgroup_inouの曲は「自分が強くなったように思わせてくれる」ものというよりは、「自分を軽くしてくれる」ものです。聴いているうちに足取りが軽くなって、結構どこにでもいけそうかも、と思えてくる。耳から元気をチャージしてくれるというよりは、耳から余計な心配や緊張を抜いてくれる音楽です。
そして、ほんわかと切なさを残していくという。
まるで夏の終わりのような奴らだぜ!といつも心にくく思います。
「新譜が楽しみ」なミュージシャンは、「新刊が楽しみ」な作家を見つけるのと同じくらい難しく、しかもそれは年をとるごとに難しくなっていくし、また減ってもいきます。group_inouはわたしにとってのそういう稀有な存在でした。
彼らが新譜を出すたびにすぐに購入し、ジャケットをぴったり包むビニルを苦労しながら破り、トレイにCDを乗せて、ぴかぴかに新しい音がスピーカーから流れ出るのを待つ。いそいそ、わくわくしながら、ひとりで新しい音楽に向き合う時間。
group_inouは新譜を出すたびに進化していて、その変化が新しい「好き」を産む感じでした。
前の方が良かった、なんて思ったことがない。でも、前の曲もちゃんと大好きなんです。
つまり、好きな曲が単純に、どんどんどんどん増えていく感じ。
生活に「好き」が増えていくのはとても幸せなことなので、そういうミュージシャンに出会えたことは幸運だなあと思います。
なので、group_inouが年内で活動休止するというニュースを知り、大変ショックを受けています。
理由はわからないけど、「活動休止」であって「解散」ではないのだから、またいつか再開してくれるでしょう。
そう信じて待っていようと思います。
好きな曲はいっぱいあって、「COMING OUT」も「MAYBE」も「9」も「RIP」も「SHIP」も「COIN」も、その他にもいっぱい好きな曲はあるんですけど、常に進化しているinouをたたえるべく、いちばん新しいアルバム『MAP』から「BLUE」という曲を選びました。
「光で気付いた 蜘蛛の巣
きらきらと輝く 風鈴 草履
サプライズをちょうだい
浮かんでいたいから
サプライズをちょうだい
浮かんでいたいよね」
夏の終わりはいつもさみしいものですが、
でもまた来年には、まっさらでぴかぴかの夏がやってくるんですよね。
新しいgroup_inouを、気長に待ってます。
text:土門蘭