Esbjörn Svensson Trio / Goldwrap2013.9.16
全国的に大きな爪痕を残した台風18号。
桂川の渡月橋、鴨川の三条大橋、福知山の由良川。
テレビのニュースもこの話題でもちきりでしたね。
速報枠が東北大震災の時のことを思い出し、なんとなく嫌な気持ちになったのは私だけではないはず。
強い雨がひっきりなしに降り続いていた昨日の深夜12時頃、荒々しく鳴らされる家のチャイム。
こんな時間になんだろうと思いつつ、なんだか嫌な予感が。
扉を開けると裏に住むおじちゃんが懐中電灯を持って立っていました。
「あかね!はよ車どかさんとまたイかれるで!急げ!」
予感が当たったことで心臓がドキっとなり、横を向くとタイヤが半分ほど水に浸かったフィト子が。
そうです、去年の台風に引き続き、また我が家に水の魔の手が迫って来ていたのでした。
急いで高台に車を移動させ長靴で水をじゃぶじゃぶさせて帰ってくるこの間5分、水かさはみるみるうちに玄関のアプローチまで登っていました。
ここからの時間は本当にしんどかった。怖かった。
増える水かさ、止まない雨とパニックになる母親。
消防に土嚢を急かす電話、いざという時に備えて1階にあるものをひたすら2階に運び、土嚢の到着を今かいまかと待ちます。
(しかも母親、焦るあまりにギックリ腰になり動けず)
消防の方々が到着するころには水は玄関すれすれまで迫って来ていました。
とりあえず土嚢を設置してもらうも全く数が足りず、次の到着も待てど暮らせど来ず。
さすがにこの時はイライラしてしまいました。
次が来てすぐに、水の床下への侵入を防ぐため家の四方にある通気口を塞ごうとしましたが、すでに完全に水に浸かっていて手遅れ。
極めつけにその通気口がどこにあるのかすら分からず、どうにもこうにも諦めざるを得ませんでした。
消防の方々が去って行った後は、水かさが下がるのを祈るのみ。
この時間、本当にもどかしい。
何か行動しなくてはと思うものの、もう何もなす術がない自分。自然の脅威を思い知らされる時間です。
もう手遅れだと知りながら、気持ちを落ち着ける為に雨の中積まれた土嚢の位置を直している時は涙がこぼれました。
この瞬間を、私は一生忘れることは無いでしょう。
結局、幸いにも水は玄関口に侵入してくる前に引き始めてくれました。
この時点で既に4時。
雨は変わらず降り続いていたので全く落ち着きませんでしたが、疲労が勝ってしまいすこし仮眠を。
そして目が覚めた頃には完全に水は引いていました。
大量のゴミと泥を残して。
大雨の際、この辺の区域で真っ先に被害を受けるのは私の家と両隣の計3件。
というよりこの3件から浸水が始まると言っても過言ではないです。
少し窪んでいる立地なので水が流れ込んでくることに加えて、目の前のコンクリートの下に埋まっている川がものすごく細く、すぐに水が溢れてしまうという2つの悪条件が揃っているのです。
この箇所は、以前から市の要工事対象とされてきた場所。
そして昨年の記録的な大雨の時に起こった浸水を経て、市は私たち地域に早急に工事をしてくれること約束してくれました。
しかしこの1年2ヶ月、一向に工事は始まりませんでした。
挙げ句の果てに被害の心配の無い川の拡張工事を始める始末。
後回しにされた結果が今回の2度目の浸水です。
この3件は緊急時に真っ先に対応するという市の言葉の真意も、土嚢の到着の遅さが物語っています。
もしすぐに対応してくれていれば、水の床下への侵入を防げたかもしれない。
床下の収納がまたおじゃんになることだって無かった。
うちより玄関が低いお隣さんが床上浸水することだって。
そりゃあ、市にも何かしらの考えがあるのでしょう。
別にイジワルされているなんて毛頭思いませんし、市が嫌いだということでもないです。
ただ、同じ出来事はもう起こって欲しくなかった。起こして欲しくなかった。
心から信頼できるところであって欲しいのです。
被害に遭ってしまう私たちにとって、対策工事をしますと言ってくれた以上、早く取りかかって欲しいと切に願うのは当たり前のこと。
はっきりと言うと、床「下」浸水では市からの補助金が降りません。
車がレッカーで運ばれ、床下を全て張り替える事態に陥った去年も許可が降りることはありませんでした。
だからこそ、私は腑に落ちないのです。
床下浸水しても金は出さないけれど対策工事はもうちょっと待って、そんなの矛盾している。
ここで怒りをあらわにしたところでどうにかなる問題ではありません、だけれど今回の台風をこういう思いで過ごしていた人もいるんだということを知って欲しいと思い、ここに書きました。
この台風で、うちなんかより遥かに大きな被害を受けた家は沢山あります。
そういったニュースを見ていると、私の家に起こったことなんてちっぽけだなあと思わざるを得ません。
だけど、ちっぽけでも大きい。
私にとっては本当に大きなことだったんです。
当然、何も被害が無いにこしたことはありません。
それでもこうやって感じさせてくれたこの一連の出来事に感謝します。
少しの皮肉の意味も込めて。