音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

初めての海

蜀咏悄 1

このあいだ灰ヶ峰という山で少女の遺体が見つかって

16歳の女の子が逮捕されたという事件が起きたけど、

あの山は私の実家の近所である。

小中高と、よく遠足に行っていた。

郵便番号(737で始まる)と同じで、標高737メートル、と覚えるようしつけられ、

ずいぶん長い間「郵便番号はその地の山の標高」と思っていた。

「北海道はずいぶん低いんだなあ、山…」と。

 

だいぶなじみのある山なのでニュースでその事件が扱われるたび釘付けになっていたんだけど、

特にLINEでのやり取りで明らかになる方言がすごい気になる。

なんていうかこう、方言を全国に放映されるときの恥ずかしさとか…

アナウンサーが読み上げる際のイントネーションに対するもどかしさとか…

方言が完全に理解できると、なんかもう、その子たちが他人事とは思えなくてどきどきした。

 

で、今回帰省したときに会った高校時代からの友達とそのことについて話していたら、

完全に自分も方言が戻った。

れんたろうに、

「ちょい待ちんさいや、そっち行ったら危ないけえ、

待っとりんさいよ、今持ってきちゃるわいねー」

などと言っている自分に気づき、

「母親な私(広島弁ver.)」という、新しい自己認識と共に、

少女だった私も母親になったのだなあ…

と改めて灰ヶ峰の事件に心を痛めるのであった。

 

今回の帰省で、れんたろうは初めて海に行った。

実家は港町なのですぐ近くに海があるのだ。

父と夫と4人で海水浴へ。

「初めての海かー」と、父は嬉しげにカメラを2つ持ってきた。

しかし海についたとたん、れんたろうは寝た。

予想より早いお昼寝である。

「起きろー」と言ってもゆさぶっても全然起きない。

しかたがないから寝たままで水着に履き替えさせ、

私と夫で海に入った。

数十分後、テントに帰ってきてもれんたろうは寝ている。

しかたがないのでまた海へ。

100均で買ったしょぼい浮き輪で浮いてみたり、

ナンパしようとしている男子ふたりの逡巡を眺めたりした。

 

ようやく起きたれんたろうは、

まず水着を着ている両親のけったいな格好に怯えて泣き、

次にビーチサンダルを嫌がって泣き、

砂浜の熱さに泣き、

もちろん海の波にも泣いて、

とりあえずずっと泣いていて目が腫れた。

 

きゃっきゃ遊ぶシーンを想像していたので、

目がべんぞうさんみたいになってる海パン姿のれんたろうを前に、

なーんも言えね、と思いました。

お昼も食べずにすぐ帰りました。

 

 

蜀咏悄 2

 

 

じいちゃんと仲良しのれんたろう。

帰るときに、

「れんたろう、帰るんか。クロネコヤマトで僕を送ってくださーいって言ったら、

ひとりでもじいじんち来れるぞ。箱の中に入って来いよ、れんたろう」

とぶつぶつ話しかけてるのが聞こえた。

じいじんち来れないよ、それ。

 

 

 

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