初めてのキャンプ2014.10.13
週刊と銘打っているのに、この2週間更新をしなかったのは、土日に予定が入って家にいなかったからである。先々週はTEDxKYOTOに、先週の土日にはotonotaniという野外音楽フェスに行って来た。
otonotaniは岐阜県のキャンプ場で行われる音楽イベントで、テントでBBQしながらライブが観られるという桃源郷のようなところであるらしい。常々音読編集長の田中さんに「れんたろうをキャンプなどに連れていきたい、やっぱ経験だしさ、何事も」などともらしていたので、一緒に行かないかと誘ってくれた。夫は残念ながら自分のライブが入っていたので、私とれんたろうだけ田中さん夫妻に便乗して出かけた。夫は寂しがって泣いていた(たとえではなく本当に)。
テントで寝るのは初めてなので、どんな服や物を持っていけばいいのかまったくわからない。寒かったらいけないから、れんたろうがいつになくおしっこを垂らしてはいけないから、慣れないシャンプーで髪の毛がきしきしになったらいけないからなどといろいろ用意していたら一泊二日なのにボストンバッグがぱつんぱつんになった。私は何日間旅に出るのかと呆然とする。
まずはお肉のスーパーで肉を買いまくる。
私は臓物系が好きだ。れんたろうもミノが好きだ。
田中さんと佐野君は、結構がっつりあぶらが乗ってるのが好きだ。カルビとか。
れんたろうは「うしさんのくるま」に乗って「たくしーです」と言っていた。
「まま、のってください。たくしーです。どこいくか」
(後ろに乗りながら)
「じゃあ、駅までお願いします」
「わかりゃした。ぶーん。ききー。えきです」
「はいどうも」
「おかねください」
「有料なのね。はい、100円です」
「ありがとうごぜえました」
なぜか江戸っ子口調なれんたろうであった。
車で二時間ほどかけて会場に向かった。
テントの設営を見守るれんたろう。
夫妻は慣れている。
私とれんたろうは慣れていないので、頭脳プレーはふたりに任せることにして、私はひたすら車から荷物を移動させる係。肉体で勝負である。
肉屋でもらったうまいぼうをしゃこしゃこ食べながら私たちの仕事ぶりを見守るれんたろう。
子供はかわいい以外何の役にも立たない。と誰かが言ったのを思い出す。
ビールを飲み始めた私たちは何だか楽しくなってきた。
準備ができたので肉を焼いて食べる。酒を飲む。食べる。飲む。
何しろしこたま買い込んできたので肉や酒はいくらでもある。
と思っていたらあっという間に酒がなくなってしまった。
しかし屋台では生ビールというものが売っているので何も怖いことなどない。という気分になる。つまり酔っ払っている。
れんたろうは佐野君と遊んでもらって機嫌が良い。
すこぶる平和だ。
ビールを飲みながらへらへら笑っていたら突然れんたろうに
「きゃんぷがいいよーきゃんぷがいいよー」
といわれる。れんたろう、これがキャンプだよ。と教える。
クリトリック・リスが始まったので観にいく。
れんたろうは「なになに?おんがく?」とわくついていたのだが、ステージにいるスギムさんを見てさっと固い表情になった。
「こわい?」
(こくりとうなずく)
「やめる?」
(首をふる)
「観るの?」
(こくりとうなずく)
かたくなに彼を見つめ続けるれんたろうは何を思うのか。
「バンドマンの女」は名曲だ。
それからまたやきそばを食べたり酒を飲んだりした。
そして気づいたらテントで寝袋にくるまってれんたろうと爆睡していた。
「あれ…、音楽、聴いてない…」
クリトリック・リス以外何も観ていないことに気づきしばし呆然とする。
しかたがないので二度寝した。寝袋はあったかかった。
朝ごはんはパンと目玉焼き。鉄板で焼くとすごいうまい。
れんたろうに玉子持たせたらぐしゃりと握りつぶしていた。
白身と黄身が芝生をつるりと滑っていった。
れんたろうが突然エヴァンゲリオンの「残酷な天使のテーゼ」を歌い始めた。
「ざ、ん、こ、くのてんしのてーぜ。しょ、う、ねんよ、しんわになーるっ」(原文ママ)
「神話になるのか」「予言だ」と大人たちがどよめく。
何度も何度も大きい声で歌うので通りすがりの人に笑われた。
れんたろうなりの音楽なのかもしれない。
台風が来ていたので二日目は残念ながらすぐ帰った。
車の中でれんたろうはずっと歌っていた。
結局otonotaniで観たのクリトリック・リスだけだった。
初めてのキャンプで浮かれすぎてしまったので、
次はもうあまり飲まないで、もっとうまくキャンプを楽しみたい。
何かだいたいつかめた感じがする。キャンプというものを。
おもしろかった?と尋ねたら「うん、れんちゃん、たまごぐしゃーってした」と言われた。
他にもいろいろあるだろうよ、おもいでがよ、と思った。