音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

キャラ弁が作れない母のある日の手記

FullSizeRender_1

このあいだれんたろうの保育園でお弁当持ち散歩というのがあって、

保護者の方はお弁当を用意してくださいねと保育士さんに言われた。

ことこまかな注文もあって、たとえば

・生ものは入れない(トマトとか、くだものとか)

・つまようじなどとがったものは入れない
・水筒は首から下げられるものにお茶を半分くらいの量入れてください

・お弁当を包むのは手ぬぐいではなく巾着袋

・食べる道具はフォークのみ スプーンとかはしとか一緒になってるやつは不可

・リュックは胸のところにベルトのある固定できるものない人はバンダナなどで結びます

など、覚えられないほど多くの規則が紙に書いて壁に貼ってある。保育士さんがこれまでのお弁当持ち散歩経験から導き出した規則だ。謹んで守らなくてはならないだろう。

おりしも何かと忙しい時期だったので、前日までお弁当箱や水筒、巾着袋などを買いに行く時間がなかった。

それで保育園に迎えに行ったついでに、家に帰る前に近所のお店に必要なものを買いに行った。

れんたろうをお弁当箱売り場で解き放ち、

「何でも買ってやるから好きなもん選んでこい 」

という。

私はキャラ弁というかわいらしく心ときめくようなものを作れる自信がないので、お弁当箱で満足度を高めてやろう金で解決してやろうという魂胆だ。

れんたろうはわーっと駆けていき、わーっとスーパーマリオのお弁当箱を持って帰ってきた。

「マリオなんて知らないでしょう。アンパンマンとかあるけどいいの」

と聞くと

「きょうりゅう、かこいい」

と言ったので、そうか、冷静に考えればヨッシーは恐竜だったな、そしてマリオはひげのはえたおじさんだな、と思ってそれを買った。

 FullSizeRender

私は毎朝お弁当を自分のぶんと夫のぶんを作っているので、

れんたろうのぶんを作るのくらいわけはない。

ただ、前日の夜のおかず豚のしょうが焼きとかよりは、レトルトだろうがミートボールなど非日常的なものが入っているほうがよかろうと考え、スーパーでそれを買って帰る 。

果たしてこんだては

・たまごやき

・ほうれんそうのごまあえ

・かぼちゃの煮つけ

・ミートボール

とあいなった。もちろん面倒なので米はそのままインしてしゃもじでペンペンである。

できあがった弁当を見て 、

「なんていうか全然かわいくないな 忙しいOL でももっと洒落るだろうな

と思う。それは私のいつもの弁当なわけなのだが。

おそらくみんなかわいいかまぼこやらおにぎりやら想像力の限界、私の想像の枠を超えた何がしかの素敵なおかずが入っているにちがいない。

しかしそんな創造力も手先の器用さも圧倒的に足りないので、しばし呆然としたあと海苔をわしわしとはさみで切ることにした。

星型に切ってみる。細長い星ができる。いびつだ。却下して食べる。

ハート型に切ってみる。何とかできた。うん、 ハート型にしか見えない。ぺた、と米の上に貼ってみる。どう?どうなのこれ?わからない。もう一枚貼ってみる。ますますわからない。

そうだ、4枚のハート型のとんがってる部分を中心に向けて、円を描くように貼り付けるとクローバーになるというではないか。クローバーは洒落ているのではないか?うん、洒落ているのではないか?私は米に貼り付いた海苔を慎重にはがし、慎重に貼りなおし始める。四葉のクローバーの完成だ。できた。 お弁当持ち散歩に幸あらんことを

FullSizeRender_2

れんたろうは保育園へと意気揚々と出かけていった。

「今お弁当食べてるころかな 」と仕事中も気になる。

迎えに行って「お弁当どうだった?」と何となく小声で聞くと、

れんたろうはにこにこしながら

「おにぎり食べた!」

と言った。

おにぎりなんか入れてねえよ!

と思った。

でも完食してくれてて嬉しかった。

その夜、フェイスブックで同じクラスのママさんのあげていたお弁当の写真を見て、私は驚愕することになる。

何だこのかわいさは しょ、職人さんなのか…?

夫に私の作ったお弁当の写真と彼女のお弁当の写真を見せて、どうだろうか、れんたろうはまわりから浮いていなかっただろうか、と意見を求めると

「おまえは なんでクローバーなんかに

と彼はiPhoneの画面から目をそらした。

自粛してその写真は載せません。名誉が著しく損なわれるので。

私自身、お弁当はふたで隠して食べるタイプだったので一度お弁当箱一面白米だったことがある。箸でほじくると下からおかずが出てきてあの時は本当に度肝を抜かれた。父が寄り弁にならないためにおもんぱかって考案してくれたお弁当であるれんたろうにそんな思いはさせたくない。お弁当が華やかなだけですごく嬉しいものだし。怠けずにちゃんと本を読んで研究しようと思う。

先が思いやられるなあ、と思う初めてのお弁当なのだった。誰か私にレクチャーしてください。

 

2024年11月のアーカイブ

これまでの連載