音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

保育参観に行ってきた

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このあいだ保育参観があったので行ってきた。

平日の午前中に行われるというので、会社 には遅刻させてもらうことにした。

その頃仕事が忙しかったので、ちょっと今回行けないかもなと考えていたのだけど、自分が子供だったころ参観日に誰も来ていないと妙にがっかりしたことを思い出して、やっぱり行くことにした。

結論として、やっぱり行ってよかった。 すごくよかった。

保育園に着くと、いつもより かなり浮かれた子供たちがいた。

いつもはすぐに仕事に行ってしまうお母さんが、なぜか今日はずっと側にいる。教室にいる。

子供たちは嬉しそうに教室の中のいちばんのお気に入りスポットにお母さんを案内し、いちばんのお気に入りのおもちゃを見せてあげたり、使い方を教えてあげたりしていた。

れんたろうがその光景を見て、手をつないでいる私を見上げながら「ママもいるの」と聞くので、「うん、いるよ」と答えたらとても嬉しそうに笑顔になった。

そして私の手を引っ張り、「ここ座って」と言って、自分は積み木を出してきてくれた。

「つみきであそぼう」

「うん、いいよ」

「あのね、こでは、こうやってすんねん」

れんたろうは本当に嬉しそうに、積み木を積んで「みてみて」「ママもやっていいよ」などと言っていた。ふたりで私の身長ほどもあるはしごを作った。れんたろうは大喜びで、友達に「みてみて」と見せびらかした。 保育参観開始5分で、無理してでも来て良かったと思った。

それからみんなで近所のお寺へお散歩に行った。

みんなお母さんと手をつないで道路を歩きながら、「あそこにオニがいはんねん」(鬼のポスターが貼ってある)とか「ここにわんわんがいはる」(犬のポスターが貼ってある)とか、勝手知ったる散歩ロードのトピックスをあれこれ教えてくれる。

たまに「抱っこ」という声も聴こえてきた。いつもは抱っこなんて言わないらしいのだけど、やっぱりお母さんといると甘えたくなるらしい。「だれも抱っこしてへんよ」と、お母さんがなだめるのも、何だか嬉しいようで終始みんな笑顔だった。

ひとりだけ、お母さんが来ていない子がいた。Y君というのだが、おなかの出っ張り具合がすごく可愛いと私が常日頃ひっそり愛でている男の子で、その子は保育士さんと手をつないでいた。寂しくないかしら、と、余計なお世話なのだけど気にかかった。

お散歩に行くときには、みんな「お散歩バッグ」というのを持っていく。

ジップロックに毛糸を通しただけのものなのだけど、子供たちはみんなそれをいたく気に入っていて、自分のお散歩バッグをちゃんと取りにいって首に提げてから出発する。

寺で見つけたどんぐりやら松ぼっくりやら落ち葉やら、心に響いたものをそれに入れて帰ってくるのが、散歩のお楽しみのひとつでもあるらしい。

れんたろうもジップロック、もといお散歩バッグに松ぼっくりをたくさん入れていた。

「どんぐりは?」と聞いても松ぼっくりしか入れない。こういうところ、私と似ているなあと思う。れんたろうはいろいろ混ぜるのが嫌いである。ごはんのときも、おかずをちゃんと仕切りで分けて盛り付けないと、怒って自分で分けようとする。私も結構、何かにつけて混ぜたがらないところがあるので、わかるぞ、と思った。

れんたろうがいちばん仲の良いH君は、どんぐりでジップロックをぱんぱんにしていた。

すごいねえ、と言うと「どんぐでぃー」とにこにこ笑う。

Y 君もどんぐり収集癖があるようで、同じくどんぐりでぱんぱんだった 。

何かの拍子で、そんなどんぐりコレクターのH君とY君がどんぐりの取り合いになってしまった。

ふたりとも必死になってどんぐりを取り合っている。H君が泣き出してしまって、Y君もぐずりはじめた。保育士さんやH君のママがなだめてもなかなかけんかは収まらない。近くにいた私も彼らをなだめたのだけど、子供ってほんと可愛いなとこういうときすごく思う。

どんぐりなんかそこらへんに落ちてるのに、彼らにとってはすごく大切なのだ。

お散歩バッグだって単なるジップロックだけど、彼らにとってはすごく大切なのだ。そう考えると、いとおしくてたまらなくなる。

帰り道、Y君が「れんくんのママ」と声をかけてきたので、「手つないで帰ろうか」と言ってみた。Y君がうんとうなずいたので、三人で手をつないで帰った。

右手にれんたろう、左手にY君。保育士さんに「すみません」と言われる。

3人で歩きながら「みて、おにくー」「あっち、おすしやさんだで」「うん、そうだねー」などと話す。兄弟が生まれたらこんな感じなのかしらと思う。

保育園が見えてきたときY君が「れんくんのママ、 おしごといくん」と聞いてきた。

「うん、お仕事行くよ」

「もうあそばないの

「うん、また今度遊ぼうね」

Y君はうん、とうなずいた。そして保育士さんに連れられて手洗い場へ行った。

一方れんたろうは私の手を離そうとしないで、「いやや」と言う。

「おしごと、ちがう。あそぶの」

「れんたろうは今からごはん。ママはお仕事。またあとで遊ぼう」

「いやや、おしごとちがう」

見ると両目に涙がじわじわ浮かんできていた。

普段れんたろうはこんなことはあまり言わない。保育園には毎日楽しそうに通っている。

こんなれんたろうを見たのは、保育園に入りたてのころ以来だった。

よしよしと言いながら抱っこしてやり、保育士さんにお願いする。

保育士さんになだめられながら、れんたろうは教室の中へ入っていった。

実は寂しいのかもしれないな、と思う。

その寂しさがいかばかりのものか、私にはきちんと推し量れないけれど。

私たちは仕事をしているから、子供に寂しい思いをさせているかもしれないけど、それをちゃんとわかってあげて、できるだけその気持ちを大事にしてあげていれば、それでいいのだと思いたい。

帰ってからいっぱい遊ぼうと思いながら、自転車で職場に向かった。

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