音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

子供のいいところを教えてください

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この間、新しいクラスになって初めての保護者会があった。

担任の先生がクラスとしての一年の目標を話したり、

親同士で自己紹介をしたり、保護者会の役員を決めたりする。

 

仕事が終わったあと軽くパンなどを保育園で食べ、

そのままれんたろうを保育ルームでみてもらって、

私はれんたろうのクラスで小さな子供用の椅子に座って

保護者会に参加した。

 

担任の先生がレジュメを配ったあと

「今から自己紹介をしていただきます。

自己紹介と一緒に、お子さんのいいところ・素敵なところを教えてください」

と言った。

そしたらお母さんたちが困ったような顔をしたり

首を傾げて考え込んだりした。

 

れんたろうのいいところかあと思って、

すぐに浮かんだのは「慎重」という言葉だった。

れんたろうは他の同年代の子に比べて落ち着いている気がする。

無茶をしない、こわがり、ひかえめ。

でもそれっていいところなのだろうかと悩んだ。

明るいっていうのでもないし、

マイペースっていうのでもないし、

しっかり者っていうのでもないし…

自分でもびっくりしたのだけど、これだというのが

なかなか思いつかなかった。

なかなか思いつかないことがショックで

「なんだろ。いっぱいあるはずなんだけど」

と焦ってしまった。

 

その時、隣に座っていたいちばん仲のいいママ友さんが

「え、全部なんだけど」

と言ったのが聞こえた。

私が驚いて顔を上げると

「何を言おうか迷うなあ。全部かわいいもん」

と笑ったので、私はなんだかひどく感動してしまって

「ほんとですね」

と言った。

 

私はれんたろうの良いところを考えるときに、

まず他の子と比較検討してあぶりだそうとした。

他の子より明るいかどうか、他の子よりしっかり者かどうか、などなど。

でもその「他の子」って誰だろう?

保育園で出会うあの子のこともこの子のことも、

実は私は何も知らない。

Aちゃんの性格を私は言葉にできないし、

Bくんの得意なことを私は知らない。

ていうか、れんたろうのことを実は知らないのではないだろうか。

 

「他の子」とは私の勝手に作り上げた子供像だった。

そんな子供像と比較させられるれんたろうは

なんだかかわいそうだなと思った。

そんなことをしなくても、れんたろうの美徳はある。

私がただ単に、それに気づいていないだけだ。

 

お母さんがひとりひとり自己紹介を始める。

私と同じく自分の子供のいいところが言えない人も、やっぱりいた。

どうしても短所から言ってしまうのだ。

なんで短所のほうが見つけやすいんだろう。

やっぱり、いらっとするからかな?

他の子とうまくやっていけるのかと心配するからだろうか。

負の感情は心に残りやすいのかもしれない。

 

逆に、自分の子供の良いところをすぱっと即答できたり

たくさん言えるお母さんもいた。

そういうお母さんはまず顔が笑っている。

子供がかわいくてしかたないという顔をしている。

実際「とりあえず、かわいいですね」と言う。

とりあえず、かわいい。

めちゃめちゃいい言葉だなと思った。

なんか、この言葉だけで子供は元気に育つ気がする。

 

この子にはこんな素敵なところがある。

でも、たとえその子がどんな子であったとしてもかわいい。

そういうふうに見られながら育てられる子供は、

きっと安心して育つだろう。

 

子供を全面的に肯定し受け入れながら、

子供をひとりの他人として認めているという、

なんだかすごいものをみている気がした。

 

私の番になり、私はれんたろうのいいところを

「和を大事にするところ」と言った。

「おもちゃを貸してあげられたり、

一緒に遊ぼうって言えたり

主役を譲ってあげられるところだと思います」

というようなことを言った。

自分も大事だけど、他の子も大事だということを

心の底で知っている子だと思う。

実はそれを知っていたのに、

これまで言葉にすることがなくて

ないものとされていたれんたろうの美徳。

 

今回言葉にすることで、私はれんたろうを

ひとりの人間として敬意をもって見た気がする。

 

 

私は母親に

「素直なところがいいところだ」

と言われ続けた。

父親には

「人見知りをしないところがいいところだ」

と言われて育った。

「しっかり者」だとか「頑張り屋さん」だとか

思えば彼らはよく褒める人だった。

 

幼い私は、言われた内容をきちんと理解できていなかったように思う。

でも「いいところ」を見つけてもらえて、単純に嬉しかったのを覚えている。

もっと好きになってもらえたような気がして嬉しかったのを覚えている。

 

 

あなたの子供のいいところって何ですか?

あなたはどこがいいところだって言われて育ちましたか?

いろんな人に聞いてみたいなと思った。

 

 

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日曜に散歩に行ったお寺にて、鐘のしたに立って

「ぱぱ、まま、だいすきよー!」と大声で叫ぶれんたろう。

どこで教わったの?と恥ずかしかったけど、嬉しかったです。

なんだか最近、子供にいろいろなものをもらっているように思います。

 

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