音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

お兄ちゃんへの道のり

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いま、二人目の子供がお腹の中にいる。

つい最近安定期に入った。

胎動っぽいものも時々感じる。

昨日も寝る前に、お腹の中でぽこぽこ動いているのを感じた。

 

妊娠がわかったのは確か2月の初め頃で、

妊娠検査薬に陽性の線が浮かび上がるのを

トイレの中でひとりでじっと見ながら心臓をどきどきさせていた。

一ヶ月前とまったく同じ様相のこのお腹の中に、

いまはもうひとつの命があるなんて信じられない。

 

「未熟な私に託された」感じは、初めてのときとまったく同じだった。

嬉しさと不安がないまぜになって、

自分でもびっくりしたけど、手が少し震えていた。

十月十日の間にゆっくり準備して強くなっていけばいいから、

何が起こっても誰か助けてくれるから、と、

妊娠検査薬の前で自分に言い聞かせた。

 

トイレを出るときにはもう腹が据わっていて、

どんと来いという気になっていた。

うん、私も強くなったなと思った。

 

 

れんたろうに

「ママのお腹の中に、赤ちゃんができたよ」

と初めて言った時、れんたろうはにこにこ笑いながら

「ぼくのおなかのなかにもいるよ」

と言った。

「男の人のお腹には、赤ちゃんできないんだよ」

と言うと、

「えっ…。それは、かっこいいおとこのひとでも…?」

とびっくりしていたので笑った。

かっこいい男の人ならできると思ってたのか。

 

安定期に入るまでは2週間に一度、いまは4週間に一度、

保育所と家の間にある、すぐ近所の産婦人科に通っている。

れんたろうを迎えに行った帰りに検診を受けるので、

いつも彼も一緒に診察室に入る。

 

れんたろうはもう慣れたもので、

「こんにちは!あかちゃんみにきました」

と挨拶する。

お医者さんは笑いながら、

「うん、あかちゃん一緒に見ようね」

と答えてくれる。

 

私が内診を受けている横で、れんたろうはおとなしく画面に

赤ちゃんが映るのを待っている。

赤ちゃんが画面に映ると、れんたろうは立ち上がって、

「おお」とか「あかちゃんや」と声をあげる。

 

初めて鼓動が確認されたとき

「元気に心臓が動いていますね」

と先生が言うと、

「えっ!しんぞう!?しんぞうってどきどきするやつ?」

とれんたろうが言った。

「そう、ここ。動いてるでしょ」

私が指を差して教えてやると

「ほんまや。すごい、どきどきどきどきしてる」

と言って笑った。

 

「かわいいね」

そのときは頭と足がやっと判断できるようになったくらいなのに、

心からそう思ってそう言った。心臓が動いていてかわいいね。

「うん、かわいいね」

れんたろうも隣で言っていた。

 

このあいだはもう、顔の形もだいぶわかるようになっていた。

「わかる?れんたろう。これが目で、これが鼻」

「うん、わかる。かおやな。そんでこれがててや。にぎにぎしてる」

「結構美人さんやな」

「うん、あかちゃんびじん」

真面目な顔で答えるので、大人たちが笑った。

 

 

 

でも、れんたろうとの生活もいいことばかりではない。

妊娠中だからかいらいらすることが多くて、

特に初期は小さいことでれんたろうに対して怒ってしまうようになった。

 

一度、れんたろうがふざけて冷たい手を服のなかに入れてきたことがあった。

そのとき

「もう!お腹さわらないで」

と強い口調で言ってしまった。すぐにしまったと思って、

「冷たい手で触るとびっくりするからやめて。あったかい手で触ってね」

とフォローしたけど、れんたろうが傷ついたのがわかった。

れんたろうは手をひっこめて「ごめんね」と言った。

 

そういうことが続いていたある日、

れんたろうをまた怒って泣かせてしまって、

これはいよいよ良くないなと思い、

「ママいまお腹に赤ちゃんいるやんか。

だから気分が悪くなったり、すぐに疲れて、いらいらしちゃうのね。

だから、最近いっぱい怒っちゃうの、わかる?ごめんね」

と説明して謝った。

れんたろうは泣きながら、うんうん頷いて

「あかちゃんはいつうまれる?」

と聞いてきた。

「まだまだだよ」

と答えると

「あしたがいい」

と言う。

「あしたはさすがに無理」と笑ったら

れんたろうもちょっと笑って

「はやくうまれないかなあ。

おこらないママがいい。ぼくはさみしい」

 と言った。

 

れんたろうは赤ちゃんに名前をつけた。

女の子だったら「みきちゃん」男の子だったら「にくくん」だそうだ。

「え、にくって、肉のこと?」と聞いたら

「ぼくおにく好きだからさ」となぜか照れながら言っていた。

ちなみにみきちゃんというのは、

れんたろうのうさぎのぬいぐるみの名前だ。

 

男の子か女の子かまだわからないけど、

君には優しいお兄ちゃんが待っている。

 

無事に、元気に生まれてきますように。

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