音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

そのずる休みは正解なのかどうなのか考えた話

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れんたろうが、保育所で週3回あるプールを「やすみたい」と言う。

理由を聞いたら「かぜだから」と言って、鼻をすすってみたり、咳き込んでみせたりする。

十中八九仮病だろうな、と思ったけど、とりあえず信じて休ませることにした。
プールを楽しんでいる学友たちを見て羨ましくなって、次から入るかもしれないと思ったから。
でもそんなことはなく、迎えに行くとれんたろうはプールを休めたことに満足しきった顔をしていた。

それなので翌々日も「やすむ」と言う。
「本当に風邪なの?風邪なら病院に連れて行くけど」
と言うと、急におどおどし始め、
「だって、プールはいるとせきがでるねん」とか「たんがでるねん」「どうすんねん」とか言う。知らんがな。

 

それで100パー仮病だとわかったので、

「なんで入りたくないのか、ほんまのこと言いなさい」

と怖い顔で言ってみた。

そしたら、「たからさがしでまけるから」と言う。
プールにきらきらしたボールを先生が投げて、それをよーいどんで取りに行くという遊びをしているらしいのだけど、それでれんたろうはいつも取れずに悔しい思いをするらしい。
その悔しい思いをしたくないから、プールに入りたくないのだという。

 

「でも、プール休んでたら負けっぱなしじゃん。ずっと勝てないよ」

と、まず正論を言ってみた。

れんたろうは「それでいい」と言う。「まけるのがいやだから」と。

「でも勝てたら楽しいんじゃないの」「でもまけるから」

「練習したら勝てるようになるよ」「でもまけるのがいややねん」

堂々巡りだった。とにかく「負け」をもう経験したくないらしい。

 

ここで「何をあほなこと言ってんの」と、無視してプール参加欄に「◯」をつけるのは簡単だ。
でも、「◯」を書く気にどうしてもなれなかった。

わたし自身プールが大嫌いな子供だったので、気持ちがわかるからだ。

 

とりあえずれんたろうには

「休みたいなら自分でちゃんと先生に話しなさい」

と言った。それができないなら入りなさい、と。

れんたろうは最初怖気付いていたけど、結局「わかった」と言った。

 

甘いなあと思いながらも、朝、こっそり保育士さんに事情を話した。

「仮病なんですけど、とりあえずまあ、今日も嫌がってるんで入れないでおきます」ということ、

そして「先生もよかったられんたろうと話してやってください」ということをお願いした。

保育士さんは快く承諾してくれた。

 

どうしたらいいのかよくわからなかったので、とりあえずプロに投げた。

迎えに行ったときに保育士さんから話を聞いて、そこから学べばいいやと思って、会社に行った。

 

 

わたしは、ずる休みをよくする子供だった。

保育所が大嫌いで、「頭が痛い」だの「風邪ひいた」だの嘘をついてよく休んでいた。

母親はわたしの仮病を本当だと信じこんでいて、らくらくと休ませてくれた。

または、普通に「今日行きたくないからやすみたい」と言ったとしても必ず「いいよ」と言った。

(母は夜の仕事だったし、わたしは小さいころから留守番に慣れていたので、

母にとっては休もうが休むまいが問題はなかったのもある)

 

思い返せばわたしは親に正論で押し切られたり、強制された覚えがほとんどない。

学校は休みたいときに休んでいいし、嫌いなものは食べなくていいし、お菓子も好きなだけ食べていい。

テレビも好きなだけ見ていいし、勉強しろと言われたこともほとんどない。

そういう教育方針だったわけではなくて、ただ単に忙しくて放任されていたんだと思う。

ストレスは少なかった。でも、自分で判断しなくてはならないぶん不安も大きかった。

だから、わたし自身は割としつけに厳しいタイプの親になったのだと思う。

 

 

夫は真逆だ。すべてにおいてぎちぎちに厳しい家庭で育った。

泣きながら「プールがいやだ」「これは食べれない」と言っても決して許してもらえなかったらしい。

だからか、れんたろうにとても甘い。

お互いに、子供のころにされていやだったことを避けて子育てしている節がある。

 

 

 

うちの母であれば、れんたろうにずっとプールを休ませるだろう。

夫の母であれば、プールに無理やり入れるだろう。

 

どちらがいいのかわからない。

わからないので、考えている。考えて、とりあえずそのどちらでもない

「子供と話し合う」とか「プロに相談する」ということを試している。

 

子育てにこれといった「正解」はない。

ただ、「子供と話し合う」ことだけはきっと間違いじゃない。

 

自分たちだけで話し合ってもわからなければ、プロに混じってもらったらいい。

そうやって話し合いながら導かれる答えが、

きっとその子にとっての「正解のようなもの」なんだろうと思う。

 

育児書よりもネットの記事よりも、まずは子供本人の声だ。

それを聞くことさえできてれば、多分いろいろ大丈夫。と、思う。

 

 

その日の夕方、保育士さんと話をした。

「れんたろうくんには、『先生と一緒に宝探しで勝てるようになろう』と言いました。『先生も頑張るかられんたろうくんも頑張ろうね』と言ったら、わかったって言ってましたよ」

れんたろうにとっては、誰かに一緒に頑張ってもらうことが「正解のようなもの」だったらしい。

 

次のプールは入ることができた。

結局宝探しではまた負けたらしいけど、「たのしかった」と言っていた。

 

いつか勝てたらいいね。

 

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