「ハッピーバースデー、ママ」2020.9.1
先月はわたしの誕生日で、35歳になった。
35歳ってなんだかいよいよ本当に「大人」って感じがするなあと思う。
30歳になったときもそんなことを思ったけれど、35歳ってなんていうか、そろそろ熟して深みを出すべき年齢、みたいな。
そうなれている気がまったくしないけれど、甘えてたらいかんな、自分の欲しいものは自分で手に入れねばならんな、と急に思い、その象徴として、今年は自分で自分のケーキを手配することにした。
今回お願いしたのは、「菓舗カワグチ」さん。
廉太郎のクラスメイトの男の子の、お母さんが営んでいる焼き菓子屋さんだ。
実はその方とは学生の頃に出会っていて(短期バイトをしたカフェのスタッフさんだった)、小学校の説明会で再会してすごくびっくりした。
彼女の作るお菓子はとってもおいしくて、わたしの大好物。前々から心の中にあった、「いつか彼女にオーダータルトを注文しよう」という夢を、35歳の誕生日に自分で叶えることにした。
メッセージを入れることができるらしいので、廉太郎に「ママの誕生日ケーキ、どんなメッセージ入れたらいいと思う?」と自分で聞いてみた。
そうしたら廉太郎が少し考えたあと、
「ハッピーバースデー、ママだいすき、は?」
と言ったので、なんだか恥ずかしいけれどそれでお願いすることにした。
「クッキーは本のかたちにしてもらわへん?」
という廉太郎の素敵なアイデアもあわせて伝える。
当日、まさにその通りのタルトができあがって、子供とともに自分の夢を叶えられたことがとても嬉しかった。当然、すごくおいしかった。
廉太郎からはずいぶん前から「プレゼント何がいい?」と聞かれていて、「なんでもいいよ」と答えていたのだけど、カワグチさんの息子さんがお母さんに贈ったというお手伝い券をわたしが羨ましがっていたら、それにしてくれた。
「かたたたきけん」「あらいもの(洗濯物)たたむけん」「何でも言うこと聞くけん」「自由になれるけん」の4種類が各4枚。それぞれ違う絵柄で、使うと補充もしてもらえるらしく、なんと無限に使えるようだ。
朔太郎は「バナナ」と「しんかんせん」と「ケーキ」の絵を描いてくれた。全部彼の好きなものだな、と思って微笑ましかった。
後日、実際にお手伝い券を使ってみたのだけど、廉太郎は驚くほどすぐに動いてくれる。
「あらいものたたむけん」を出すと、わたしがお皿を洗っている間に黙々と洗濯物をたたんでくれるし、「何でも言うことを聞くけん」を出すと、嫌がっていつも遅くまで入らないお風呂にさっさと入ってくれる。
「この券すごく使えるね」と言ったら、廉太郎が「でも一個お願いがあるねん」と言ってきた。
「この券はいつでも使っていいんやけど、そのかわり使った日は、ソファでとなりに座ってテレビを一緒に見てほしいねん」
「うん、いいけど」と思わず笑うと、「あともう一個」と言う。
「あと、券を使った日の夜はお母さんのとなりで寝たい。いっつもお母さんのとなり、朔太郎にとられてるからさ。ソファもベッドも」
「わかった」と答えると、朔太郎が何か察したのか「さくたろうも!」と言う。「朔太郎はあかんで。券つくってないやろ」と言う廉太郎は、にこにこして嬉しそうだった。
もう小学校二年生で、そろそろ親離れしているのかなと思っていたけれど、本当は弟に遠慮していたんだなぁと思う。券と引き換えに要求されることがあまりにかわいくて、嬉しいと同時に、「こういうの今だけなんだろうなー」と少し寂しくなった。日々忙しさにかまけて流してしまうけれど、あとになってから後悔しないように、今のうちにこのかわいさを享受しておきたい。
35歳。
もうすぐ廉太郎は9歳、朔太郎は4歳になる。
もうこの時期は二度と帰ってこないから、思い出をしっかり作っていこう。
そのためにここに書き残しておこう。
あなたたちの母になれてわたしはとても嬉しい。
誕生日を祝ってくれて、ありがとう。