音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

「彼らと出会えてよかったと思う」

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朔太郎は早起きで、わたしよりも先に起きていることがよくある。
起きるとまずは、寝相の悪さで転がっていった先からわたしのもとへ帰ってきて、「おかあちゃん、おはよう」と言いほっぺたにほっぺたをつけたり、毛布のなかに入ってくる。
今朝はわたしのほうが先に起きていたので、あとから目を覚ましてやってきた朔太郎に「お誕生日おめでとう」と言ってやった。すると朔太郎は嬉しそうに笑って「さくたろう、たんじょうび」と言った。

 

一階に降りて朝食を作っていたら、さらにあとから起きてきた廉太郎が「朔太郎、お誕生日おめでとう!」と大きな声で言って入ってきた。朔太郎がまた「さくたろう、たんじょうび」と言って喜ぶ。

「お母さん、朔太郎に『おめでとう』って言った?」

と廉太郎に言われ、「言ったよー」と答えると、「よかった」と安心される。廉太郎は、弟がどんなにこの日を楽しみにしていたのか知っているのだ。
「今日はお祝いしようね」と言うと、「おかあちゃんは、さくたろうにプレゼントあげるの?かめんらいだーとケーキあげるの?」と朔太郎に言われた。ちゃんとプレゼントをくれるのか、ケーキを食べさせてくれるのか、ここのところ毎日確認されている。

 

 

四年前の今日、二人目の男の子を産んだ。
わたしには兄弟がいなかったので(姉妹もいない)、男の子がどんなものなのかよくわからなかったのだけど、わたしのもとにやってきた男の子ふたりに関して言えば、優しい心を持った人間だと思う。わたしはふたりがとても好きで、尊敬もしている。

 

一人目の男の子は自分との違いを、二人目の男の子は自分との共通点を、それぞれに教えてくれた。
廉太郎はわたしと正反対の性格をしている。穏やかで、のんびり屋で、争いごとが嫌い。自分にも他人にも甘くて、「うまくなりたい」とか「強くなりたい」よりも「楽しくありたい」という気持ちが強く、基本的に機嫌が良い。
朔太郎はわたしと似た性格をしている。主張がはっきりしていて、甘えん坊で、負けず嫌い。欲しいものは手に入るまで諦めないし、自分が納得しなければテコでも動かない。好きなものへの執着が強く、意外ときれい好きでこだわりも強い。

 

廉太郎といると、幼い頃の自分に異性の親友ができたらこんな感じだろうかと思う。

朔太郎といると、幼い頃の自分と向き合ったらこんな感じだろうかと思う。

 

そしてふたりとも、とにかくわたしに優しい。
泣いていると慰めてくれるし、笑っていると喜んでくれる。まさに無条件の愛だ。
ときどき、わたしの愛よりも彼らの愛のほうが、もしかして大きいんじゃないかなと思う。
彼らといると、とても幼かったときに受けた親の愛情を、身体レベルで思い出す。

 

 

「子育てって楽しいですか」
と、このあいだ年下の友人に尋ねられて、少し考えてみたけれど、楽しいのかどうかよくわからなかった。でも、わたしはこの子たちと出会えてよかったなと思う。そう感じているのは確かだ。
「わたしは子供たちを人として好きだから、彼らと出会えてよかったと思う」
だからそんなふうに答えた。育てるっていう感覚が、もしかしたらわたしにはないのかもしれない。何かの縁で一緒に過ごすことになった。わたしのもとに、こんなに優しい子たちが来てくれた。そのことに感謝している。それだけな気がする。

 

「さくたろう、おおきくなったで」
朔太郎が自分で言う。4歳になったから、もう自分は大きいと言うのだ。

どんどん勝手に大きくなっていく。わたしは何もしていない。ただ一緒に過ごしているだけで、わたしのほうが多くのものを受け取っている。

そう思いながら「大きくなったねえ」と返事をすると、上の空に見えたのだろう。朔太郎が、

「おかあちゃん、わらってよ」

と言った。
にいっと無理やり笑顔を作ると、朔太郎はとても自然に笑って、わたしはその表情をとても美しいと思った。

 

朔太郎、お誕生日おめでとう。

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