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芸能人と結婚したら「会社員の一般男性」と紹介される俺が、生活の様々なシーンに合わせて選んだお気に入りの曲をコンピレーションアルバムとして紹介します。
普段は一人称「俺」ではないし、芸能人と結婚する予定もないですが。

最近も嗜む日本酒の話

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日本酒の美味しさをわかるのは大人になってからだとして、大人とは二十歳ではない。

「お酒は二十歳になってから」の「お酒」は日本酒のことではない。おそらくビールでもない。甘いカクテルやチューハイのことだ。

 

じゃあ、いつから日本酒を美味しく飲める大人になるのか。

答えはあなたの心の中にしかない。

だから、ぼくの心の中の話をしようと思う。

 

ぼくはこの連載を始める頃、初めて日本酒を美味しいと思えたような気がしている。

プロフィールにもビール党だが最近は日本酒を嗜むと書いてある。プロフィールは開始当初の未婚で31のままだが。

大学・就職含めて大阪、岡山と過ごし、転勤で生まれ故郷の広島に約10年ぶりに帰ってきた。28、9歳というところで、まだまだ若手である。

広島は故郷ではあるが、二十歳を超えて暮らすのは初めてで、仲のいい友人もほとんど広島を離れているので、何もかもが手探りのなかでのスタートだった。

 

その頃、出会ったのが『enja(エンヤ)』という居酒屋で、きっかけは長くなるので割愛するが、今考えるとこのときの選択は、人生最高の選択のうちのひとつと言っても過言ではない。

居酒屋といっても、カウンター席が中心で一人で気軽にいけるお店だったし、そこで出会った人たちが広島の友人となった。そのうち閉店後や休みの日に一緒に飲みに行ったりもしたし、奥さんともその繋がりで知り合っている。

お店はアンティークの和箪笥を食器棚として使ってはいるが、純和風というよりモダンな印象で、大きなワインセラーや生ハム(イベリコ豚)の原木も置いてある。そして、カウンターの前には黒板に書かれた日本酒のメニューがかけられていた。

完全にビール党で、赤星ばかり飲んでいたのだが、しばらく通っているうちに黒板のメニューを飲んでみようかなと思うのも自然なことである。

記憶を辿っているが銘柄ははっきりと思い出せない。お任せで冷たいのと頼んだし、たぶん福島の『奈良萬』か山口の『雁木』あたりではなかろうかと推量しているが、この二つは今も美味しい、好きなお酒として、脳にインプットされている。

 

それまで日本酒といえば、罰ゲーム的に一気するような飲み方しかしていないし、純米酒や本醸造酒といういわゆるお酒らしいものばかりだった。

キリリと冷えた吟醸酒の華やかな香りはワインにも似た印象だし、ブドウの酸味がないため、より甘み、旨みを感じやすい。

ただ、そんなうんちくめいた話ではなく、落ち着いてゆっくり、ほんの少しいいものをいただくというのが日本酒の、というかお酒全般の楽しみ方なんだろう。

「場」ではなく「お酒」そのものを楽しむときの話である。書いててなんとなくレコードみたいだなと思った。

当然、好みはあるけれど、真剣に向き合う時間をつくるということが本当に重要なのだと思う。

ただ、それに気づくきっかけは必要で、それはぼくの場合は『enja』にかかった黒板だった。

今では、好みの銘柄もでき、特別なときには日本酒を専門に扱う酒屋に買いにいったりもする。

 

さて、ここからは少しセンチメンタルな話になるのだが、

楽しい広島での生活と美味しい日本酒の出発点となった『enja』が今月閉店すると聞いた。

幸い友人からそのことを早めに教えてもらったし、フェイスブックでも告知されていたので、最後に顔を出すことができたが、来月には「行けない店」になる。

寿閉店というめでたい話らしいが、やはり少し寂しい。

これも歳をとり大人になったということなんだろう。時間が経つのが早い。

 

週末、奥さんとお寿司を食べる約束をしている。できれば美味しい日本酒も飲めるといい。

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