2018.12.5
当日朝の旅支度(二泊三日)
山に囲まれた線路を進んでいる。この先にも本当に線路はあるのだろうか。
ただ、暖房と窓からの日差しで車内はぽかぽかとしており、そんなことはどうでもいいことだなあとペットボトルのぬるくなったコーヒーを飲む。
実際には線路はあって、陸の孤島こと宮崎県にひと月ほど赤子と里帰りしていた妻を迎えにいくだけなのだが、一人での長距離移動は退屈だ。
5時間もの長い旅なのに文庫本がカバンに入っていなかったからなおさらだ。
昨日の夜、たしか読みかけの岸本佐知子のエッセイ集があったからそれを旅のお供に、と思いながら寝たのに朝バタバタしているうちにすっかり忘れてしまった。
駅に着く頃にはそれがわかっていたから、近くの中堅本屋に寄ったのに目当ての本が「在庫なし」の表示で、かといってすぐに他に欲しい本も浮かばず、電車まで時間もないし駅のコンビニで雑誌でもと思っていたら、魅力的な雑誌もなく、それでもホームに新幹線がついちゃったものだから、東洋経済なんて面白みのない雑誌を買ってしまった。保険の見直しがテーマだったので、つい手にとってしまった。
「備えあれば憂いなし」とはよく言ったもので、文庫本さえ昨日の夜出しておけば無駄な出費は避けられたのに、そこで保険の無駄まで指摘されることになるとは考えても見なかった。将来への準備は過不足なく行うべきだという教訓を早くも得た旅の途中である。
と、思わぬところでオチにたどり着いてしまったが、旅の準備についてはだいぶ手慣れた方だと思っている。特に一人旅については。以前出張の多い部署に所属していたこともあり、1、2泊の旅を月に何度もしていたというのが理由だ。
それと家の鍵、携帯、財布さえあれば最悪なんとかなると腹をくくっているというのが大きいと思う。家の鍵を実家に忘れて、家からほど近い東横インに泊まったのも今となってはいい思い出だ。
なので、今回の旅も当日の朝準備をした。
それでも思い巡らすことはある。
現地の気温だ。
最近急に寒くなったものだから、冬服がまだ準備出来ていない。
スーツには薄手のマウンテンパーカーを羽織っているし、シャツとの間にはカーディガンも着ている。
けど、私服においてスーツのポジションで着る服がない。衣装ケースをさらってみたが、出したての洋服は少し埃臭くてカビ臭い感じですぐには着られない。
寒かったらどうしよう。
けど、南に行く旅だ、プロ野球選手たちがキャンプしていたあの宮崎だ。暖かいかもしれないし、暑いかもしれない。
結局、移動中はほぼ空調のある電車内で過ごすことを加味し、シャツと厚手のカットソー、下着類を3セット。もしものためにクローゼットの隅にあったマフラーをカバンに忍ばせた。あとホテルや実家であれば本来準備しないが、寝巻き上下。最悪これを重ね着できる。
それでも寒ければユニクロとかで何か買おう、ウルトラライトダウンとか。ある程度の出費を厭わなければ寒さなんてなんとかなる。
そして家を出て早速マフラーを巻き、文庫本を入れていないことを思い出したのだった。
さて、早いものでもう12月。
年末年始には帰省や旅行の計画もあるでしょう。
しっかり準備するのもよいですが、普段のカバン一つで身軽な旅というのが手軽で最高じゃないですか。
気合い入れずに当日朝バタバタと準備する。
どちらにしたって当日の朝はバタバタするのだし、使わないかもしれない荷物を持ち歩くのは無駄。
最小限の荷物を最小限の時間で効率よく準備する。
野球解説者もよく言います、力みの取れたスイングがよいと。旅の準備もきっとそう。
「備えあれば憂いなし」とは言っても余計な備えは移動中の憂いでしかありません。
ということで、旅行当日少し早起きしてする支度に思いを馳せながら選曲をしました。
一曲目から「逃亡前夜」なのはご愛嬌。気分は逃亡当日でございます。
- No.1
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逃亡前夜/シャムキャッツ
- No.2
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どうでもよくなる/yonige
- No.3
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Kumbai Kumbai Cello/グッドラックヘイワ
- No.4
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YELLOW MAGIC CARNIVAL/ティン・パン・アレイ
- No.5
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Baby/泉まくら
- No.6
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スピーカーノイズ/トーベヤンソン・ニューヨーク
- No.7
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忘却のサチコ/スカート
- No.8
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CITY LIGHTS/andymori
- No.9
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あいつによろしく/YOUR SONG IS GOOD
- No.10
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NEXT/アナ
- No.11
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リセット/向井太一
- No.12
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琥珀色の街、上海蟹の朝/くるり
- No.13
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Rollin' Rollin'/七尾旅人 x やけのはら