第17週 Usual life / Akeboshi2016.11.25
昨日松尾スズキの過去のメルマガを読んでいたら、人生相談コーナーで「田舎に帰りたくてしかたないが、帰ったところで仕事もないし、僕には嫁も子供もいるので帰れません」という東京在住者からの相談があり、それに松尾スズキがこう答えていました。
「あなたにとって田舎は、戦わずして住んだ町だったのでしょう。僕は、自意識をこじらせまくっていた田舎こそ精神的な戦場でしたので」
岡崎京子はウィリアム・ギブスンの詩を引用して、「平坦な戦場で僕らが生き延びること」を『リバーズ・エッジ』の中で描き、
このあいだ亡くなった雨宮まみさんは『戦場のガールズ・ライフ』というタイトルのブログで「死にたくなる夜のこと」という記事を最後に書いた。
この文章を読みながら、そういうことを思いました。
このあいだ、『恋人たち』という映画を観ました。
映画では複数の恋人たちが登場します。でもその「恋人」は、すでにいなかったり、これからいなくなっていったり、むしろ最初からいなかったのかもしれなかったりします。
そんな恋人たちの、「平坦な戦場」の物語です。
一言でいうと、気づかないうちに泣き笑いしているような映画でした。
「ははは」と笑いながら、ふと鏡を見ると自分が泣いていてびっくりする、みたいな、そんな感じ。
恋人たちは、どうしたって格好悪い。全然美しくない。ださくて、情けなくて、みじめで、汚くて、可笑しくて、しょうもない。
「それでも生きていくんだよねえ」
って、自転車を漕ぐシーンで思って、それからやっと号泣しました。
この曲はその映画の曲です。とてもいい曲だなあと思って、あれから毎日聴いています。
text:土門蘭