音読

一日一曲 日々の気分で一曲をチョイス。 書くこと無くても音楽がどうにかしてくれる! そんな他力本願なブログです。

書き手:プロフィール

第29週 ハイウェイ / くるり

先日、文鳥社という出版レーベルを、柳下さんという方と立ち上げました。
「自分たちが読みたい本を作って、自分たちで世界に渡していく」
という理念の、たったふたりの小さな出版レーベルです。

 

そうしたら、大学時代の友人からLINEが届きました。

「らんはずっと変わらないね」

 

 

くるりの『ハイウェイ』を初めて聴いたときのことは
まるで映像で自分を見ているかのように覚えています。
受験生で、制服を着ていて、放課後でひとりCDショップで、
備え付けのヘッドフォンを耳にあてて、このミュージックビデオを観ていました。

 

親に家を出ることを反対されていて、模擬試験の結果も芳しくなくて、

わたしはいったいどうなるんだろうなあって不安でした。

浪人もさせてもらえないだろうし、すべりどめのどこかに入るのかな。

お金もないから、一人暮らしもできないかもしれないな。
そうやってこれから、仕事も、結婚も、消去法で決めていくのかな。

 

できない理由ばかり考えていると、

だんだん自分のやりたいこともわからなくなっていって、

そういうときにこの『ハイウェイ』の

 

「飛び出せジョニー気にしないで 身ぐるみ全部はがされちゃいな

 優しさも甘いキスも あとから全部ついてくる」

 

という歌詞を聴いて、ふと、そうか、と思いました。

そうか、優しさも甘いキスも、あとから全部ついてくるのか。

 

そのとき、もし大学に落ちても、親に反対されても、

3月には家を出ることを決めました。

どうなるんだろうな、じゃなくて、どうしたいかな、だなって思って、

元気になって帰ったのを覚えています。

 

 

 

文鳥社をやると決めたときに、偶然またこの曲を聴いて、

そのときのことを思い出しました。

それでちょっと笑いそうになりました。

また励まされてしまったなあと。

 

 

やろう、と決めたときの、ふわっと足を踏み出す感じ。

前に進むしかなくなったあの感じが、結構好きです。

身ぐるみ全部はがされても、多分残るものがあって、

その残ったものにこそ、優しさや甘いキスが祝福のように与えられるんじゃないかな。

あれから13年たって31歳になった今、改めてこの曲に

「飛び出せジョニー気にしないで」

と、背中を押されました。

 

 

 

そうやってわたしは言葉に救われたり癒されたり、

背中を押されたりしながらやってきました。

 

だから友人の

「らんはずっと変わらないね」

というのも、本当にそうだねって思います。

 

 

text:土門蘭

 

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